前回はライティングと背景を作成しました.今回はフライングロゴ編の最終回.レンダリングやテストレンダリングについて紹介していきます.
静止画,アニメーションに関わらず実際の作業では途中で何度もレンダリングして確認することがあります.アニメーションの場合だとアニメーションのタイミングを確認するためにレンダリングする事もあります.というのも,Cinema 4Dエディタの中で再生しているアニメーションは実際の再生時間と合わない場合もあります.理由としてはオブジェクトが多かったり,複雑なアニメーションをしていたりと様々です.エディタ上で再生させたスピードは実際にレンダリングしてみると思ったより早い,遅いということは少なくありません.
ですので,事前に実際のスピードを確認するためにもテストレンダリングを行います.アニメーションはフレームが多ければ多いほどレンダリング時間がかかるため,さすがに本番レンダリングのクオリティで出すわけにいかないでしょう.
そこで,アニメーションのタイミングを確認したい時によく使うのがビューポートレンダリングです.ビューポートレンダリングはエディタの見た目をレンダリング結果として出力して動画プレイヤーで再生できるようにします.連番出力した場合はAfterEffects等で動画フォーマットとして書き出すと良いです.アニメーションのタイミングを実際の時間で確認するために良い手段のひとつですので覚えていて損はないと思います.
ビューポートレンダリングしてみる
レンダリング設定(Ctrl + B)を開き,
「レンダラー」…「ビューポートレンダラー」
に変更します.
ビューポートレンダラーを選択し,「フィルタ」の
「ジオメトリのみ」…「オン」
にします.
エディタ上にはグリッドや座標軸,カメラ,ライトなど様々なオブジェクトのラインが表示されていますが,ジオメトリのみをオンにするとそれらはレンダリング時に非表示になります.

レンダリングして確認してみましょう.ただし,ここで使うのは「レンダリングして画像ビューアーに」(Shift + R)のコマンドです.エディタの見た目でレンダリングされることを確認します.

それではアニメーションとしてレンダリングするために,「出力」タブを開き,
「フレームレンジ」…「全てのフレーム」
にします.

「保存」を開き,
「ファイル」…「保存するディレクトリとファイル名」
「フォーマット」…「動画フォーマット」(mp4やmov)
にします.

できたら,もう一度「レンダリングして画像ビューアーに」(shift + R)を実行します.レンダリングが完了したら保存ディレクトリを開いて出力した動画ファイルを動画プレイヤーで再生します.これが実際のタイミングでの再生状態です.シーンが複雑になってきたらこの方法で正確なタイミングを見るとよいでしょう.
実際のレンダリング結果でテストする場合
ただ,どうしても実際にレンダリングした綺麗な状態で確認したくなることもあります.その場合には
- 解像度を小さくする
- レンダリング設定で品質を落とす
- フレームステップを使う
といった方法が考えられます.
解像度を小さくする
出力解像度を小さくすればレンダリング時間は短くなります.この時注意したいのはアスペクト比が変わらないようにします.「出力」セクションにある「比率を固定」を「オン」しておけば,幅,高さいずれかを変えるとアスペクト比を維持したままスケーリングできます.アスペクト比が変わるとカメラから見える範囲も変わってしまうので気を付けておきます.

レンダリング設定で品質を落とす
シーンが複雑になればなるほど単純に一枚出力する時間が長くなります.そこで,確認用として成立する程度にレンダリング品質を落としてレンダリング時間を短縮させる方法です.アンチエイリアスも標準レンダラーであれば「なし」にすると早くなります.「フィジカルレンダラー」の場合は「サンプリング品質」や各「分割数」を小さくします.

また,グローバルイルミネーションを使っている場合はGI設定の品質も低くすることでレンダリング時間を短縮できます.「グローバルイルミネーション」の「一般」タブの「サンプル数」を「カスタムサンプル数」に変更して「16」や「32」といった小さな値にすると計算も早く終わります.「イラディアンスキャッシ」タブのレコード密度も「プレビュー」にしておけば比較的早く終わるでしょう.


またはグローバルイルミネーション」自体を「オフ」にしてしまうのもいいかもしれません.ただ,ライティングが大きく変わるので問題なければ…ということになりますが.
フレームステップをつかう
「出力」セクションに「フレームステップ」という項目があります.これを「2」にした場合,1フレーム飛ばしてレンダリングします.全体が30FPSで120フレームであれば,実際にレンダリングするのは60フレームなので単純にレンダリング時間も半分になります.フレームステップはフレームが欠けた状態なるので再生させたときにカクついて見えてしまいますが,それでもなんとなく全体の雰囲気の確認用として使うのには十分な場合もあります.

いずれにしてもアニメーションをきちんとレンダリングするのはとても時間がかかってしまいます.チュートリアルのような簡単なシーンならともかく,もっと複雑なシーンでは形状,ライト,質感も相当作り込むことがあるため確認用とはいえ簡単にレンダリングして確認,というわけにもいきません.レンダリングPCを増やしたり,クラウドレンダリングなどを活用しなければならないなど,色々な問題が出てきますのでレンダリングコストも考えながら作業していく必要があります.
確認したら本番レンダリング
形状,マテリアル,ライティング,アニメーションのタイミングも良し,という事になれば本番レンダリングしていきますので本番用のレンダリング設定を一つ作成しましょう.
レンダリング設定を開き,新しくレンダリング設定を作ります.左下のレンダリング設定の欄の空いている箇所で右クリックして「新規」をクリックするか,既存のレンダリング設定を選択してコピーペースト(Ctrl + C,Ctrl + V)するか,既存レンダリング設定をCtrl + ドラッグして複製してもう一つ作ります.名前を「本番」とでもしておきましょう.また,名前の左側にあるアイコンをクリックして使用するレンダリング設定を複製した方に変更します.複数のレンダリング設定は例えば,テスト用と本番用のレンダリング設定を切り替えたりするときに使えます.

詳しくは紹介しませんが,レンダリング設定も親と子を作って親の設定を引き継ぎつつ,子で上書き設定するといったこともできます.
本番用レンダリング設定の各項目の設定を確認していきます.
「出力」
・解像度は合っているか
・フレームレンジは合っているか
・フレームレートは合っているか
・フレームステップは1になっているか
「保存」
・保存にチェックが入っているか
・保存ファイル名は正しく設定してあるか
・ファイルフォーマットは意図したものになっているか(連番の場合は.pngなどの静止画フォーマットです)
「レンダラー」と「フィジカル」設置
今回使うのは「フィジカル」です.「フィジカル」セクションを開いて,サンプリング品質や分割数を適切に設定します.

PCの性能に余裕があれば「モーションブラー」を「オン」にしても良いでしょう.
「フィジカル」レンダラーでモーションブラーを使う時は,カメラの「シャッター速度」も適切に設定しないとブラーが強すぎたり,弱すぎたりします.「モーフカメラ」の「フィジカル」タブを開いて「シャッター速度」を「1/60秒」か「1/125秒」あたりが適切でしょうか.

GI設定
GI設定も本番用に変更します.「グローバルイルミネーション」の「一般」タブを開き,
「サンプル」を「中」または「カスタムサンプル数」にします.
「カスタムサンプル数」にした場合は,
「サンプル数」…「256」
にしておきます.

「イラディアンスキャッシ」の設定も本番用にします.
「レコード密度」…「中」
「スクリーンスケール」…「オフ」
にします.

これで本番用設定は完了です.「レンダリングして画像ビューアーに」(Shift + R)を実行してあとは待ちましょう.レンダリング結果は次のようになります.
以上で作って覚える フライングロゴ編は終了です!何かの役にたてれば幸いです.ここまで読み進めてくださった方,お疲れ様でした.そしてありがとうございます.