前回は浮き輪形状のベースを作りました.今回はベース形状をクロスシミュレーションで実際に浮き輪っぽい形状に変化させていきます.
クロスによる着付けを使う
ポリゴンオブジェクトの「浮き輪ベース」オブジェクトを選択し,「タグ」→「シミュレーションタグ」→「クロス」を選びクロスタグを割り当てます.
クロスタグを割り当てたら,試しにアニメーションを再生してください.シミュレーション系機能を使うと重力の影響を受けてオブジェクトは下に向かって落下してきます.ただ,今回は重力は使わずに形状のみ変化させたいのでプロジェクト内の重力設定を無効にします.
「プロジェクト設定」(Ctrl + D)を開き「シミュレーション」タブの中の
「重力」…「0cm」
に変更します.これでアニメーションを再生させるとオブジェクトは落下しなくなります.
クロスで着付けする
「ポリゴン」モードへ変えて,「ループ選択」ツールに切り替え,ブリッジで接続したポリゴンを一周を選択します.このポリゴンをクロスタグの着付けという機能でくっつけます.
クロスタグを選択し,「着付け」タブを開き「つなぎ目ポリゴン」の「復元」をクリックします.これにより自動的に「着付けモード」が「オン」になり,選択していたポリゴンに黄色い対角線が追加されます.このポリゴンは縫い目,または接着面と言い換えれば伝わるでしょうか..
「モデル」モードに切り替え,「選択オブジェクトに合わせる」をクリックすると,つなぎ目ポリゴンがくっつくように移動することを確認します.また,「着付けした状態」の「クリア」で初期状態に戻ることも確認しておきます.
この仕組みを使ってより浮き輪らしい形状にしていきます.「服をオブジェクトに合わせる」の下には「フレーム数」と「つなぎ目の幅」という2つのパラメータがありますので,それぞれ
「フレーム数」…「60」
「つなぎ目の幅」…「1㎝」
とします.
「フレーム数」
「服をオブジェクトに合わせる」を実行したとき,指定したフレーム数が計算に使用されます.「10」フレームに指定した場合は,実行から10フレームだけ着付けの計算が行われ,それ以降は計算されません.フレーム数を増やせば計算時間も増えるので精度も高くなると言えます.計算は「Esc」キーで中断できるので,多少多めのフレームを指定しても大丈夫です.
「つなぎ目の幅」
つなぎ目ポリゴンが縮む際に,指定した値の幅まで縮みます.しっかりくっつけたい場合は小さな値を指定します.逆にそれほど縮ませたくない場合は大き目な値を制定します.
一度「着付けした状態」を「クリア」してから,再度「服をオブジェクトに合わせる」を実行すると,計算フレーム数が長くなったことで,より密着した状態になるはずです.ややアウトラインが波打ちしているのと,もう少し浮き輪っぽく空気をしっかり入れた状態にしたいです.
そこで,「クロス」タグの「タグ」タブを開き,「バルーン」オプションを展開します.そして
「バルーン」…「オン」
「超過圧」…「0.6」
「膨張時間」…「60F」
とします.
バルーンを使うとオブジェクトを風船のように膨らませることができます.使用条件としてはオブジェクトが閉じられた状であることです.「超過圧」は内部からどれだけの圧力をかけるかです.「膨張時間」で指定したフレーム数だけ圧力が均等に加えられます.実際の浮き輪のように空気を入れていく過程とよく似ています.それでは,もう一度「着付けした状態」を「クリア」してから,再度「服をオブジェクトに合わせる」を実行すると,以下のようになります.
これで浮き輪の基本形状ができましたので,この状態をさらにポリゴンとして固定させます.計算が終わった状態で「浮き輪ベース」を選択し,「現在の状態をオブジェクト化」を実行します.
クロス着付け結果を別オブジェクトして取り出したらクロスタグは削除します.元のオブジェクトは不要ですが,念のためバックアップグループへ置いておきます.
浮き輪にディテールを追加する
最後につなぎ目を少し押し出してディテールを追加して完成とします.「ポリゴン」モードにして「ループ選択」でつなぎ目のポリゴンを選択します.右クリックのコンテキストメニューから「押し出し」をします.
「押し出し量」…「5㎝」
「キャップを作成」…「オフ」
にして「適用」クリック,またはEnterキーで実行します.
そのまま「スケール」ツール(T)でY方向にのみ少し小さくします.Y軸にカーソルを合わせてハイライトしたらドラッグします.
サブディビジョンサーフェイスで細分化する
「浮き輪ベース」オブジェクトを選択したままAltキーを押しながら「SDS」を作成して細分化します.Altキーを押しながらオブジェクトを作成すると自動的に選択していたオブジェクトの親になります.
今回は短めの内容でしたが,これで浮き輪の形状ができました.次回は細かい皺のディテールやマテリアルの設定をしていきます.