今回はフライングロゴ編の最終回.カメラやレンダリング,テストレンダリングについて紹介していきます.
動画による全行程
前回まではオブジェクトのアニメーションを作成してきました.今回はカメラアニメーションを作成します.
カメラアニメーションの完成としては,テキストベースの側面からはじまり,変形に合わせて隙間をかいくぐりながら最後は斜め下からやや見上げるようなアニメーションです.
一つのカメラに対してキーフレームを記録しても良いのですが,カメラの位置,角度が様々に変化していくため後々の修正が少し大変そうです.そこで,今回はカメラモーフという機能を使って,何台か設置したカメラをモーフィングさせながらアニメーションさせる方法を使います.モーフィングは段階的な状態を事前に用意しておいて,ある状態から別の状態へスムーズに変化させていくことができます.そのカメラ版です.
カメラモーフを使う場合には,事前に複数のカメラを配置することになるので,まずは最初の位置にカメラを配置していきます.
1台目のカメラを作成する
シーンに新規カメラを作成します.
1台目のカメラ設定を調整します.まずは焦点距離を広角気味にして空間の奥行きをしっかり出しておきます.
「焦点距離」…「広角(25㎜)」
座標と角度を調整します.カメラに切り替えてエディタ上で操作して合わせても構いませんが,パラメータとしては以下のように設定します.チュートリアル通りの場合は次の数値を使用していますが,見た目ベースで合わせても問題ありません.
「P.X」…「-730㎝」
「P.Y」…「-40㎝」
「P.Z」…「-1250㎝」
「R.H」…「-30°」
「R.P」…「0°」
「R.B」…「-90°」
とします.R.Bを90°にしてカメラを傾けています.レンダリングのセーフフレームから少しテキストベースが隠れるくらいの位置になります.
エディタ上でのカメラの傾きは「3 + 右ドラッグ」で調整することもできます.
また,カメラの名前を「RSカメラ 1」として最初のカメラであることが分かるようにしておきます.
2台目のカメラを作成する
1台目のカメラ位置が決まったらデフォルトカメラに戻します.そしてシーンに2台目のカメラを追加します.タイムラインを「70」に合わせてておきます.70フレームの時のカメラの位置を決めます.
「オブジェクト」タブの
「タイプ」…「透視」
「焦点距離(mm)」…「25」
とします.
「座標」タブを開き
「P.X」…「90㎝」
「P.Y」…「50㎝」
「P.Z」…「-630㎝」
「R.H」…「-20°」
「R.P」…「-15°」
「R.B」…「-30°」
とします.大体以下のような見た目にして,変形するテキストベースの下側を潜り抜けるような位置にしておきます.また,カメラの名前は「RSカメラ 2」としておきます.
3台目のカメラを作成する
カメラをデフォルトカメラに戻して,3台目のカメラをシーンに追加します.タイムラインは120フレームに合わせておきます.
「オブジェクト」タブを開き
「タイプ」…「透視」
「焦点距離(mm)」…「40」
とします.
「焦点距離」…「40」
「P.X」…「200㎝」
「P.Y」…「-100㎝」
「P.Z」…「-500㎝」
「R.H」…「20°」
「R.P」…「20°」
「R.B」…「0°」
とします.やや下から煽り気味でロゴを見上げる位置となります.カメラの名前を「RSカメラ 3」としておきます.
カメラモーフを作成してモーフィングさせる
これで3つのカメラがそれぞれの位置に配置できたので,これらをモーフさせるためにカメラモーフを作成します.まずはオブジェクトマネージャ上でカメラの並びを上から「RSカメラ 1」,「RSカメラ 2」,「RSカメラ 3」と並び変えておきます.並びによってモーフィングする順番に影響がでるためです.また,カメラをすべて選択した状態にしておきます.
次に,メインメニューの「作成」→「カメラ」→「カメラモーフ」でモーフカメラを作成します.カメラに「カメラモーフ」タグがついたカメラがシーンに追加されます.
モーフカメラがシーンに追加されるので,カメラをモーフカメラに切り替えます.
モーフカメラ自体は通常のカメラですが,モーフタグが適用されているので選択します.
カメラモーフタグにモーフィング用のパラメータがいくつかありますが,今回使うのは「ブレンド」だけです.ブレンドは「ソースカメラ」に追加されたカメラの状態をブレンドする割合で,「0%」なら「RSカメラ 1」の状態になり,「100%」なら「RSカメラ 3」の状態になります.中間で「RSカメラ 2」となります.
また,カメラモーフにはカメラの焦点距離をはじめとする各種カメラパラメータのモーフィングもできます.それらは「モーフトラック」のチェックボックスで設定ができます.
それではブレンドにキーを記録してカメラアニメーションを作成します.タイムラインを「0」フレームに合わせて
「ブレンド」…「0%」
でキーを記録します.
タイムラインを「90」フレームに合わせて,
「ブレンド」…「100%」
でキーを記録します.できたら,エディタカメラをモーフカメラに切り替えてアニメーションを再生してみましょう.
モーフカメラを使うと「ブレンド」のコントロールだけで各カメラの位置や角度はもちろん,焦点距離なども変化させていくことができます.各カメラの位置を変更したり,「ブレンド」のFカーブでタイミングを変化させれば良いので後からの調整もやり易いでしょう.
別の方法としては単独のカメラに位置や角度,焦点距離にキーを記録する方法や,スプラインに沿ってカメラを移動させる方法もあります.どの方法が良いというわけではなく,それぞれにメリットがあるので作成する内容に応じて使い分けられるようにしておくのが良いでしょう.
これでカメラモーフによるカメラアニメーションの作成はできました.
ビューポートレンダリングで確認
アニメーション制作においては度々確認用のレンダリングを行うことがあります.実際にレンダリングしてアニメーションを確認したいところですが,Redshiftでレンダリングしてしまうと時間がかかってしまいます.アニメーションの速度や印象を確認したいだけなら,ビューポートレンダリングを行うのが良いです.
レンダリング設定(Ctrl + B)を開き,
「レンダラー」…「ビューポートレンダラー」
に変更します.
ビューポートレンダラーを選択し,「フィルタ」の
「ジオメトリのみ」…「オン」
にします.
エディタ上にはグリッドや座標軸,カメラ,ライトなど様々なオブジェクトのラインが表示されていますが,ジオメトリのみをオンにするとそれらはレンダリング時に非表示になります.
「出力」セクションで,
「フレームレンジ」…「全てのフレーム」
にします.
「保存」セクションではファイル名とフォーマットを指定しておきます.簡単な確認用なので
「フォーマット」…「mp4」
として,直接動画ファイルとして保存します.
レンダリングして確認してみましょう.ただし,ここで使うのは「レンダリングして画像ビューアーに」(Shift + R)のコマンドです.エディタの見た目でレンダリングされることを確認します.
レンダリングが完了したら保存ディレクトリを開いて出力した動画ファイルを動画プレイヤーで再生します.アニメーションのタイミングなどのみ確認したい場合はこちらの方法で行えば時間が短縮できます.
実際のレンダリング結果でテストする場合
ただ,どうしてもマテリアルやライティングをレンダリングした綺麗な状態で確認したくなることもあります.その場合には
- 解像度を小さくする
- レンダリング設定で品質を落とす
- フレームステップを使う
といった方法が考えられます.
解像度を小さくする
出力解像度を小さくすればレンダリング時間は短くなります.この時注意したいのはアスペクト比が変わらないようにします.「出力」セクションにある「比率を固定」を「オン」しておけば,幅,高さいずれかを変えるとアスペクト比を維持したままスケーリングできます.アスペクト比が変わるとカメラから見える範囲も変わってしまうので気を付けておきます.
レンダリング設定で品質を落とす
シーンが複雑になればなるほど単純に一枚出力する時間が長くなります.そこで,確認用として成立する程度にレンダリング品質を落としてレンダリング時間を短縮させる方法です.Redshiftの場合,「基本」モードなら「低」にしてみると良いでしょう.「アドバンス」モードではさらに品質を落としてレンダリングすることも可能です」
フレームステップをつかう
「出力」セクションに「フレームステップ」という項目があります.これを「2」にした場合,1フレーム飛ばしてレンダリングします.全体が30FPSで120フレームであれば,実際にレンダリングするのは60フレームなので単純にレンダリング時間も半分になります.フレームステップはフレームが欠けた状態なるので再生させたときにカクついて見えてしまいますが,それでもなんとなく全体の雰囲気の確認用として使うのには十分な場合もあります.
いずれにしてもアニメーションをきちんとレンダリングするのはとても時間がかかってしまいます.チュートリアルのような簡単なシーンならともかく,もっと複雑なシーンでは形状,ライト,質感も相当作り込むことがあるため確認用とはいえ簡単にレンダリングして確認,というわけにもいきません.レンダリングPCを増やしてネットワークレンダリングや,クラウドレンダリングなどを活用しなければならないなど,色々な問題が出てきます.
レンダリング時間を抑えるための工夫は色々ありますが,ここでは省きます.
確認したら本番レンダリング
形状,マテリアル,ライティング,アニメーションのタイミングも良し,という事になれば本番レンダリングしていきますので本番用のレンダリング設定を一つ作成しましょう.
レンダリング設定を開き,新しくレンダリング設定を作ります.左下のレンダリング設定の欄の空いている箇所で右クリックして「新規」をクリックするか,既存のレンダリング設定を選択してコピーペースト(Ctrl + C,Ctrl + V)するか,既存レンダリング設定をCtrl + ドラッグして複製してもう一つ作ります.名前を「本番」とでもしておきましょう.また,名前の左側にあるアイコンをクリックして使用するレンダリング設定を複製した方に変更します.複数のレンダリング設定は例えば,テスト用と本番用のレンダリング設定を切り替えたりするときに使えます.
レンダリング設定も親と子の階層を作ることができます.親の設定を引き継ぎつつ,子で上書き設定するといったこととができますが,今回は割愛します.
それでは本番用レンダリング設定の各項目の設定を確認していきます.
「出力」
・解像度は合っているか
・フレームレンジは合っているか
・フレームレートは合っているか
・フレームステップは1になっているか
「保存」
・保存にチェックが入っているか
・保存ファイル名は正しく設定してあるか
・ファイルフォーマットは意図したものになっているか(連番の場合は.pngなどの静止画フォーマットです)
Redshiftの品質を確認
Redshiftの品質は「中」としておきます.少しざらつきがありますが,チュートリアルなので十分です.
これで本番用設定は完了です.「レンダリングして画像ビューアーに」(Shift + R)を実行してあとは待ちましょう.
レンダリングされた連番画像をコンポジットソフトで動画として書き出した結果は次のようになります.
以上でつくって覚える第2回 フライングロゴをつくろうは終了です!
スプラインラップやモーフカメラは何かと便利な機能ですので,制作の引き出しとして何かの役にたてれば幸いです.ここまで読み進めてくださった方,実際に作業をされた方,お疲れ様でした.そしてありがとうございます.