Cinema 4D 2023 新機能解説の記事です.モデリング機能としては対称編集が完全に新しい機能になりました.
新 対称ツール
Cinema 4Dのモデリングの弱点とも言われていた対称モデリングがアップデートされました.2023からは対象オブジェクトを使わずに直接ポリゴンを対称編集ができるようになったのが最も大きな変更点です.また,新しい対称ツールはグローバルなツールとして機能するため,選択ツールやスカルプトツール,ペイントツールでも利用することができます.
アイコンパレットから「対称を有効」を「オン」にして編集を行います.新しい対称ツールは機能をオンにすることでシステム全体に効果を及ぼす仕組みになっています.対称ツールがアクティブの状態であれば,常にモデリングや選択も対称機能が有効となります.不要な場合はオフにします.アイコンはデフォルトレイアウトでは画面中央上部にあります.
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左が対称ツールのオンオフ,右の歯車は対称ハブという設定ウィンドウが開きます.
新しい対称ツールの特長
先ほど述べたように対称ツールはCinema 4Dのグローバルな機能として使用できるようになりました.対称ツールがオンの状態であれば,対応しているツールの場合は常に機能します.例えばモデリングツールから選択ツールを切り替えたとしても,対称ツールは機能し続けます.
また,ポリゴンメッシュを直接編集する際に機能するのは当然ですが,メッシュトポロジーが完全に対称で無い場合でも,許容値を調整することで多少左右の頂点の位置が違ったとしてもある程度まで対称として認識させることができます.さらにキャラクターのポージングを取らせた後でもトポロジーモードで設定を調整することで対称編集が可能で,これはとてもありがたい機能だと思いました.
対称ハブでモードや対称平面を調整できます.さらに対称化コマンドで反対面にメッシュをマージすることもできます.これが対称ツールの概要です.ここからは各オプションなどをチェックしていきましょう.
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対称ハブ
対称ツールをオンにすると,対称ハブの設定を元に対称平面が作成されます.対称平面やモードを変更する場合は対称ハブを開きます.
ただ,この対称ハブウィンドウは別の操作をするとウィンドウ自体がすぐに閉じられてしまうため,対称設定を何度も調整したいような場合は,ウィンドウ右上のピンアイコンをクリックしてピン止めしておくと良いでしょう.
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「対称面を表示」…現在の対称設定に定義された対称平面をビュー上に表示します.対称作業中に対称面が分かりにくい場合は表示すると便利です.
「コンテキスト」…モデリングとスカルプト,自動から選択できます.対称ツールはモデリングツールで使用する時とスカルプトの時で対称ハブの内容が変わるのですが,「自動」にしておくとツールを切り替えた時点で自動的に切り替わるという事です.通常は「自動」で特に問題ないと思います.
「モード」…「平面」と「トポロジー」が切り替えできます.平面モードは下にあるXYZ平面のチェックボックスから対称平面を定義できます.トポロジーモードはメッシュのトポロジー情報から対称を定義するため,メッシュ構造は対称だけれど,ポーズが左右対称でないキャラクターなどを対称として定義するために有効なモードです.
「空間」…対称平面の基準を変更できます.オブジェクトのローカル軸に,ワールド軸,作業平面,それとも自身で定義したカスタム平面から選択できます.カスタムにした場合は対称平面としたい座標位置,角度を自由に定義できるほか,「オブジェクトをピックアップ」して定義することもできます.
「限定」…オフの場合は,編集対象が完全に対称形状になっている場合において対称であると判定されるめ,反対面でわずかに座標位置が異なると対称編集ができません.このオプションを「オン」にすると次の「許容値」を利用して,どこまでズレた頂点,エッジ,ポリゴンを対称として認識させるかを調整できます.
「許容値」…「限定」がオンの時に有効になります.どこまでのズレを対称として認識させるかを調整します.対称がうまく認識されない場合はこの値を少し上げてみると良いでしょう.
トポロジーモード
トポロジーモードはデフォーマなどで変形した形状に対して対称を定義できるモードです.次の画像のように非対称の形状に対して対称エッジ,またはポリゴンを定義してメッシュトポロジーから対称が認識されます.対称となるエッジ,またはポリゴンを選択し,「選択を定義」します.
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エッジやポリゴンは必ずしも対称ラインをすべて選択する必要はなく,上記のようにループエッジがはっきりと中心を通るような場合は,一つのエッジから選択を定義しても上手くいきました.
スカルプトブラシはどうなる?
スカルプトツールに元々あった対称機能も対称ハブに移動してきました.スカルプトツールを使う場合は,対称ハブの内容が「コンテキスト」の設定に応じて切り替わります.スカルプトモードではトポロジーモードが使用できません.また,スカルプトツール特有の放射機能が利用可能です.
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ペイントツール
対称ツールはペイントツールにも対応しているので,頂点マップ,頂点カラーのペイント用にも活用できます.
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選択範囲を記録した場合は「選択を対称化」も使う
選択ツールでも対称ツールは機能しますが,選択範囲を記録に関しては対称選択している部分は記録されません.マテリアルの貼り分けといった作業を,対称ツールを使って選択範囲を記録するために使うのはできないようです.
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こういった用途で使う場合は,「選択」メニュー→「選択を対称化」ツールを使ってから選択範囲を記録しましょう.
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「対称化」コマンドもアップデート!合わせて覚えると便利
前バージョンまでは「ミラーリング」という名称のツールでしたが,対称ツールのアップデートに伴い,「対称化」という名称に変更になり,機能も向上し,反転メッシュの作成もできるようになりました.(反転するためにスケールに-1を設定する方法は法線が反転するのであまり使いたくないですしね…)
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対称化の設定パネルも項目がアップデートされていますので,順を追ってみていきます.
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「ハブとリンク」…対称化コマンドで使用される対称面をハブの設定から継承させて使うことができます.「オフ」の場合は対称化する平面を「ローカル」,「グローバル」,「作業平面」,「カスタム」から選択できます.
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「向き」…「ハブとリンク」が「オン」の場合に選択できます.「+ から -」の場合は,対称平面の正方向にある形状が反対側へミラーリングされます.「ハブとリンク」がオフの場合はXYZ各軸に対して「オフ」,「+ から -」,「- から +」を選択できるようになります.
「平面に沿ってカット」…「オン」の場合,定義した対称面でカットラインが生成され,反対側が接続された状態で対称化されますが,「オフ」の場合は単純に対称化され分離したミラー形状が生成されます.
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「外側を除去」…「平面に沿ってカット」が「オン」の時に使用できるパラメータです.ここで言う「外側」というのは「+ から -」にしたときの「-」側を指します.「- から +」にした時は「+」側を指します.「外側を除去」が「オン」の場合は対称化を実行した際に「外側」のジオメトリが削除されることを意味します.つまり,「オフ」の場合は,上記「平面に沿ってカット」が「オン」であっても単純なミラーリングとして実行されます.
「つなぎ目を結合」…「平面に沿ってカット」が「オン」の時に使用できるパラメータです.「オン」の場合は,対称化で生成した形状を元の形状のポイントと結合させます.「オフ」の場合は,対称化しても分離したままとなります.
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「許容値」…「つなぎ目を結合」する際の各ポイントを結合されるまでの距離を定義します.大きくすることで,ポイントがある程度離れていても結合されます.
「ディゾルブ」…「オン」の場合は対称化した際に対称平面にあるポイントとエッジが削除されます.対称平面上のポイントやエッジが不要な場合は「オン」にすると良いでしょう.
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反転メッシュをつくる方法
左右反転のメッシュを作る方法はMAXON公式動画でも紹介されていますので,ぜひ参照ください.5分あたりからその説明がされています.
動画内でも言及しているように,メッシュ反転する時は法線が反転してしまう等の問題があって,意外と生成に手間取っていたのですが,新しい対称化ツールを使うと簡単でした.
反転したいメッシュのポリゴンをすべて選択して,対称軸を設定し,「平面に沿ってカット」を「オフ」にしてOKを押すと,メッシュ全体が反転した状態で生成されますが,カットされずに独立した状態になります.その後,最初のメッシュが選択されたままになっているで,削除すれば反転メッシュが出来上がります.
これまで「対称」ツールやスケール反転で行う場合には問題が多く,Cinema 4Dの弱い部分とも言われいてた?部分が改善されています.