Cinema 4D 2026.1:MoGraphと液体がさらに進化
「スケールアウェア」な MoGraph Advanced Distributions
今回のMoGraphのハイライトは,オブジェクトの「サイズ」を自動で認識して配置する新しい分布システムです.従来の分布では難しかった配置ができるようになりました.
現実世界の物理法則に基づいた自然な配置が,ノードを組まずに実現します.
新しい分布タイプはクローナーの「アドバンス」モードで使用できます.分布カプセルとなる別オブジェクトを追加・指定して使用する点が通常の分布と異なります.
分布をアドバンスへ変更し,「参照」から使用可能な分布カプセルを作成・指定できます.分布カプセルは手動で作成・指定もできます.または「作成」からカスタム可能な分布ノードを組むこともできます.


分布タイプ
Stack Distribution(スタック分布)
サイズの異なるオブジェクト(例:様々な厚さの本)でも,完全に垂直・水平に積み重ねることができます。さらに「積み重ねたい総量(例:高さ40cm)」を指定するだけで自動で個々のオブジェクトの配置を調整してくれます.軸の方向,スケールのランダマイズもでき,エフェクタなしでスケールの異なるオブジェクトをスタック複製配置できます.

Cannonball Distribution(キャノンボール分布)
大砲の玉や缶詰,ボールなどを隙間なくピラミッド状に積み上げる配置をワンクリックで生成します.オブジェクトのサイズ調整にも追従するため,手作業で調整する手間が一切ありません.


Spline Beats Distribution(スプラインビーズ分布)
進化のポイント: スプライン(曲線)に沿って複数のオブジェクトを配置する際,それぞれのオブジェクトの幅や長さを考慮し,互いに干渉しない最適な間隔で配置します.ネックレスやビーズのような表現で威力を発揮します.

スマート六角分布
従来のハニカム分布をさらに使いやすくし,効率的かつ正確に配置できるようになりました.他の分布と同様にオブジェクトのサイズを自動的に調整しハニカム上に敷き詰めることができます.そうしたくない場合は自動スケールをオフにして使うこともできます.これまで以上に簡単に調整できるようになりました.

パーティション分布
パーティション分割されたスペースにクローンを敷き詰めていくタイプです.これまで難しかったトラックの荷台に詰めるような配置を簡単につくれます.パーティションの生成やパターン自体をアニメーションさせるとモーショングラフィックス的にも興味深いものが作れると思います.

液体シミュレーションのリアルさが向上
液体シミュレーション(Liquids)機能には、よりリアルで制御しやすいフローを可能にするアップデートが含まれています.
Liquid Flow Emitter(水流エミッタ)の登場
従来のパーティクルエミッタと異なり,これは「蛇口やホースからの水の流れ」といった持続的で安定した流れのために最適化されています.エミッタの速度が変化しても,液体の密度を自動的に一定に保ち,途切れたり薄すぎたりしない自然な液体を生成します.

このケースでは,パーティクル速度が小さくなると流体量も自動的に減少してきます.
ボリュームモードの搭載: 「1秒間に1リットル」というように,体積ベースで放出量を設定できるようになり,より物理的に正確なシミュレーションが可能になりました.
Liquid Fill Emitter の拡張
コップなどの閉じた空間に液体を注入する機能に「塗りつぶし割合」が追加されました.例えば,容器の「50%」まで「Y方向」から塗りつぶすといった現実の注ぐ動作に近いセットアップが容易になりました.



煩雑な作業を軽減するワークフロー改善
Preserve UVs(UVを保持)機能
モデリングの途中で「ここのエッジをもう少し動かしたい」ということがよくありま.しかし,エッジをスライドさせたり動かしたりすると,せっかく展開したUVが引き伸ばされて崩れてしまうのが問題でした.
この新機能はUVを完全に保持したままモデリング作業を行うことを可能にし,モデリングとUV作業の境界線を曖昧にしてくれます.
モデリング設定の「モデリングモディファイア」で有効にできます.

テイクシステム(Takes)の強化
レンダリングの「テイク」ごとにドキュメントの「時間範囲(フレーム数)」を個別に設定し,上書きできるようになりました.これにより異なるカットのフレーム範囲をテイクごとに管理できるため,レンダリング設定の管理が大幅に簡素化されます.
Redshift 2026.2:レンダリングの品質とスピードが両立
待望の「テクスチャディスプレイスメント」の導入
Redshiftユーザーが長年待ち望んでいた機能の一つが,この新しいディスプレイスメント手法です.

従来のディスプレイスメントは,ディテールを表現するためにジオメトリを非常に細かく分割する(テッセレーション)必要があり,メモリを大量に消費し,プレビューも重くなりがちでした。
テクスチャディスプレイスメントのメリット: この新機能はテッセレーション分割を必要としない新しいアルゴリズムを採用しています.結果としてIPR(インタラクティブプレビュー)での速度が向上し,プレビューがより軽く,よりインタラクティブになります.高精細なディテールを維持しながらVRAM(グラフィックメモリ)の消費を抑えることが可能です.
レンダリング設定のディスプレイス(変位)設定のタイプを「テクスチャ変位」に変更します.

ただし、この手法はスカラー(高さ方向)のディスプレイスメント専用であり、複雑な形状変形を伴うベクトルディスプレイスメントには、従来通りVertex Displacement(頂点ディスプレイスメント)を使用する必要がある点には注意が必要です。
また,現在のところ「変位ブレンダー」によるテクスチャ合成はできません.したがって,カラーレイヤーやカラー合成ノードを用いてテクスチャを合成した結果を変位ノードへ渡して使用します.

UV Context Projection (UVコンテキスト投影)ノードによる表現力の向上
テクスチャの配置やタイリングを制御するための非常に強力で新しいノードです.
UV制御の一元化: UV変換(スケール,オフセット,回転など)をこのノード一つで一元管理し,複数のテクスチャにまとめて適用できます.

このノードを介してテクスチャをタイリングすると,個々のテクスチャに同一の,あるいは異なるタイリングを適用し,それらをブレンドするなどが簡単になります.
また,テクスチャディスプレイスメントと組み合わせて使用した際にUVコンテキスト投影ノードを介してテクスチャをタイリングすると,タイリングされた個々のタイルに対して高解像度のベイク処理が行われます。これにより全体の解像度(ベイク解像度)を上げなくてもテクスチャのディテールを劇的に向上させることが可能になります.
トリプラナー投影の柔軟性: そしてなんとこのUVコンテキストノードはTriPlanar(三面投影)をサポートしています.そのため,従来のトリプラナーノードが個々のチャンネルごと(カラー,ラフネス,ノーマルなど)に必要だったのに対し,UVコンテキスト投影ノード一つで完結できるのです.

あるいは異なる投影(トリプラナーも)の合成のノード構成も非常にすっきりします.

すごく強力と言わざるを得ない!!
Adobe Substance Sampler との強力な連携
Substance Samplerユーザーに朗報です.Adobe Substance SamplerとCinema 4D/Redshiftとの間にシームレスなブリッジ(接続)が可能になりました.

マテリアルの自動構築: Sampler側で作成したマテリアルを直接C4Dにエクスポートができ,Redshift用のマテリアルノードツリーが自動的に構築されます.
Redshiftのノード構築に慣れていないユーザーにとってこれは時間と学習コストを大幅に節約する機能です.
パラメータの動的制御: Sampler内で公開設定(Expose)したパラメータ(例:木の樹皮の密度、色のバリエーション、粗さ)を,C4D内のRedshiftマテリアルから調整・アニメーション化できるため,アーティストにとって手助けになるでしょう.

まとめ
今回の Cinema 4D 2026.1 と Redshift 2026.2 のアップデートは、MoGraphの分布向上,液体シミュレーションのリアリティ追求,そしてRedshiftのレンダリングワークフローの劇的な改善を同時に実現しています.
特にディスプレイスメントの進化とUV Context Projectionノードは,高品質なビジュアルをより速く,より少ないメモリ消費で実現するための大きな一歩となるでしょう.
ぜひこれらの新機能を活用し制作の可能性を広げてください.

