このチュートリアルではMoGraphとスプラインラップデフォーマを使って簡単なフライングロゴアニメーションを作成していきます.それほど派手なものではないですが,このチュートリアルで主に使う機能はMoGraphによるテキストアニメーションとスプラインラップデフォーマを使った変形アニメーションとなります.
スプラインラップデフォーマはスプラインに沿ってオブジェクトを移動させたり変形させることができる便利なデフォーマです.様々なパラメータを活用することで比較的簡単に多様な変形を表現できるので,使う場面も結構多いイメージがありますので,パラメータの役割を理解して色々なシーンで応用できるようにしておくのも良いかなと思います.カメラアニメーションはモーフカメラを使用して作成することにしました.
このチュートリアルを大きくパートに分けると
- スプラインラップによるテキストの台座の変形アニメーション
- テキストロゴのアニメーション
- モーフカメラによるカメラアニメーション
となります.この作って覚えるシリーズは操作も細かく記載していこうと思っていますので,文章や内容が少しくどくなってしまうところが多々あると思いますが,初心者の方がなるべく詰まらないように配慮していますのでご容赦頂ければと思います.
新規プロジェクトを作成する
Cinema 4Dを起動して新規プロジェクトを作成します.まず最初にやることはプロジェクト設定(Ctrl + D)を確認する事です.特にプロジェクトスケールはしっかり確認しておきましょう.プロジェクトスケールは今回も「cm: センチメートル」で作成を進めていきます.
「FPS」…「30F 」
「時間最大」…「120F」
としておきます.このチュートリアルでは4秒間のアニメーションを作成します.

表示単位は「cm」にしておきます.表示単位は一般設定(Ctrl + E)を開いて「単位」セクションから変更できます.

単位表示が煩わしい場合は「単位を表示」を「オフ」にすることもできますので,ある程度慣れたら好みに応じて設定を変えても良いでしょう.
これでプロジェクト設定は完了です.
イラストレーターのベクターファイルをインポートする
最初にテキストの背景オブジェクトを作成します.このオブジェクト自体はスプラインを押し出して作成していくので,スプラインペンを使って押し出し用スプラインを作成しても良いですが,チュートリアル的にはサイズは統一した方が良いと思い,今回はIllustratorの作成したファイルをCinema 4Dへスプラインとしてインポートしてそれを押し出していく方法をとります.
実際,Illustratorファイルをインポートする機会は多くあります.例えばロゴデータやテキストのアウトラインをIllustratorファイルで支給されることも少なくありませんし,複雑なベクターデータはIllustratorの方が作りやすいケースもあるでしょう.
.aiファイルをインポートする場合は,「ファイル」→「プロジェクトをマージ」(Ctrl + Shift + O)から行うか,エクスプローラーからファイルをCinema 4Dのウィンドウ上へ「Shift + ドラッグ&ドロップ」して行うこともできます.(通常のドラッグ&ドロップの場合は新規プロジェクトが作成されます)


.aiファイルのインポートダイアログが表示されるので,
「スケール」…「10」(cm: センチメートル)
でインポートします.1だと小さすぎたので今回は10としているだけで特に決まりがあるわけではありません.オプションで「ベクターオブジェクトを作成」を「オン」にしておくとCinema 4Dのベクターオブジェクトにaiファイルがリンクされた状態で読み込まれ,そのまま押し出しなどの操作ができますが,今回は使用しません.

ベクターデータを整理して押し出す
BG.aiファイルをインポート後は,必要なスプラインと不要なスプラインが混同しているので,まずは必要なスプラインだけを取り出して他は削除していきます.

今回必要なスプラインは次の画像の黄色い枠で囲った3つのスプラインです.これらを複数選択して「オブジェクト」→「オブジェクトを一体化+消去」を実行し,一体化させます.また他のスプラインやヌルは削除しておきます.必要なスプラインには「BGスプライン」と名前を付けておきます.


このスプラインのローカル軸位置はワールドの原点にありますが,実態のポイントがオフセットした状態にあるので軸位置をポイントの中心かつ下のラインの位置に変更しておこうと思います.実際にはこの作業は無しで進めても大丈夫ですし,場合によってはこのままの方が都合が良い時もあるので,軸変更はその時々の判断で調整したりしなかったりとなります.
BGスプラインを選択して「モデルモード」にすると,軸位置が原点にあることが分かります.「作って覚える 基礎チュートリアル」では「軸を有効」という機能を使って軸位置を変更しましたが,今回は「軸ツール」を使ってみましょう.

メインメニューから「ツール」→「軸」→「軸ツール」をクリックすると軸ツールダイアログが表示されます.

BGスプラインを選択した状態で,
「中心を操作」…「オン」
「アクション」…「軸を」
「中心を操作」…「全てのポイント」
「X」…「0%」
「Y」…「-100%」
「Z」…「0%」
にして「実行」します.軸位置は全てのポイントの中心を基準としているので,XとZ方向は0%なので中央に,Y方向は-100%なので全てのポイントの一番下に移動することになります.

軸位置を変更したら,BGスプラインの座標位置を原点「0,0,0」に設定して移動させます.これで軸位置が中央下部で,かつ原点に再配置させることができました.

軸の位置の調整は「軸を有効」のほかに,この「軸ツール」を用いた方法もあります.他にも様々な方法はあります.軸位置を中央に調整する作業は今回のチュートリアルではさほど重要ではないのですが,オブジェクトを扱いやすくするために軸位置がどこにあるかを把握しておくこと,また調整方法を知っていることがとても重要なことです.最初の内は軸位置を調整する意味がよく分からないかもしれませんが,経験を重ねるほど軸の重要性が分かってくると思いますので,今の段階ではなんとなくそういうツールがあるんだ,程度でもかまいません.
余談ですが,私に関しては軸ツールの他に次のコマンドもよく利用するのでカスタムレイアウトから実行できるようにアイコン化して組み込んでいます.ショートカット登録しておくのもよいかもしれません.「スケールをリセット」は軸操作とはことなるのでここでは割愛します.

軸ツール | 軸ツールダイアログで軸位置を細かく調整できます. |
軸を中心に | 軸位置をオブジェクトの中心に移動させます. ※実行時の設定は軸ツールの設定が使用されます. |
オブジェクトを中心に | オブジェクトを軸位置の中心に移動させます. ※実行時の設定は軸ツールの設定が使用されます. |
親を中心に | 親オブジェクトの位置を選択オブジェクトの軸位置に移動させます. ※実行時の設定は軸ツールの設定が使用されます. |
中心を親に | 選択オブジェクトを親オブジェクトの軸位置に移動させます. ※実行時の設定は軸ツールの設定が使用されます. |
ビューの中心に | 選択オブジェクトをエディタビューの中心に移動させます. ※実行時の設定は軸ツールの設定が使用されます. |
軸位置の調整は本当に重要な要素なのですが,少しずつ理解を深めていけば問題ありません.
スプラインを押し出して台座を作成する
スプラインを押し出してキャップの設定をする
それではシーンに「押し出し」を作成してBGスプラインを子オブジェクトに設定します.ここで時短方法を紹介しておきます.BGスプラインを選択した状態で「Altキー」を押しながら「押し出し」を作成すると,選択していたオブジェクトの親に自動的に配置されます.ドラッグ&ドロップして子オブジェクトにする手間が省けるので覚えておくと便利です.
ただし,この方法は「新規オブジェクトの軸位置は選択していたオブジェクトの位置に作成される」というルールが適用されます.よって,BGスプラインの座標位置が仮に「100,0,0」という位置にあったとしたら,押し出しオブジェクトの座標位置も「100,0,0」に配置されるということです.
軸位置がどこにあるか把握できていない状態でこの方法でオブジェクトを作成していくと,色々なオブジェクトの軸位置がバラバラの状態になってしまい,最終的には扱いにくいシーンとなってしまう可能性があるので,選択オブジェクトの軸位置がどこにあるのか,また先に紹介した軸位置の調整方法もしながら軸の位置や向きを意識しながら作業してみるとよいでしょう.実際に軸の位置や向きがバラバラのデータはインスタンスやMoGraphにも影響がでますし,他にも様々な問題につながる可能性が高いのです.
押し出しオブジェクトのパラメータを
「オフセット」…「25cm」
「分割数」…「5」
とします.分割数を上げたのは後にスプラインラップデフォーマで変形させたときに崩れないようにさせるためです.
さらに「キャップ」タブを開き,
「ベベル形状」…「カーブ」
します.「カーブ」モードにするとスプラインカーブの形状からベベルを調整できますが,今回は「プリセットを読み込み」をクリックしてデフォルトで用意されているカーブから好きなものを選んでみてもよいでしょう.

プリセットを選択したら,「サイズ」は好みで調整しておきます.
デフォーマで綺麗に変形させるために分割数をあげる
後工程の変形のために押し出し方向の分割数はさきほど上げましたが,あと2か所の分割数も上げる必要があります.それはキャップ側とアウトライン側の分割数です.現在の状態を確認するためにエディタメニューの「表示」→「グーローシェーディング(線)」に変更します.表示に関してのショートカットも今後のために覚えておくとよいでしょう.表示関して先にNを押して,続けて各種モードに対応したアルファベットを押します.N~Bと押せばグーローシェーディング(線)になります.

すると押し出しのポリゴン分割線が見えてきますが,キャップの部分にはなにも表示されてないですね.実はキャップ部分はN-ゴンという多角形が生成されているのですが,この状態は綺麗に変形させるのが難しいので,均等に細かく分割する設定に変更していきます.

アウトラインの分割数をあげる
アウトラインの分割数はBGスプラインの設定を変更します.BGスプラインを選択し,「オブジェクト」タブを開き,
「補間法」…「細分化」
「最大長」…「10cm」
とします.スプラインの制御ポイント数自体は変わりませんが,内部的には細かく分割された状態になり,押し出しなどの処理結果が変わってきます.

キャップ側の分割数をあげる
押し出しオブジェクトの「キャップ」タブを開き,
「キャップタイプ」…「均等分割」
「サイズ」…「10cm」
にします.キャップ内部のポリゴンが10cmサイズで均等分割されます.これで全体のポリゴン数を上げることができたので,デフォーマで変形させても形状が壊れにくくなります.分割結果はタイプによって変わるので,用途に応じて適切なものを選択するとよいでしょう.

今回はここまで.次回はスプラインラップデフォーマを使って変形アニメーションを作成します.