レンダリングとは
3DCGにおけるレンダリングとは,オブジェクトやマテリアル,ライト,カメラなどの設定をしたシーンを計算し,2D画像として出力することを指します.実はエディタ上で作業している時に表示されている画面もレンダリング結果と言えますが,シーン全体をリアルタイムに計算して表示しているため複雑な光の計算はできません.※昨今のゲームエンジンではリアルタイムレンダリングでも非常に綺麗な絵を出力できるようになっています.
シーンデータをレンダリングするソフトウェア(レンダラ)に渡して,シーンの質感やライトの計算を行い,あらかじめ2D画像として出力することをプリレンダリングといいます..プリレンダリングではより複雑な質感の計算や照明計算を行うことができるため,精度の高い絵を出力することができます.シーン設定が複雑になればなるほど,基本的にはレンダリング時間が伸びていきます.
Cinema 4Dにはプリレンダリング用レンダラーが標準で付属しています.標準レンダラー,フィジカルレンダラー,Redshift(S26から使用可能,ただしCPUのみ)から選択できます.Redshiftは元々サードパーティ製レンダラですが,Cinema 4D S26からはCPU版が搭載され,Redshiftライセンスが無い方でもCPUならレンダリングできるようになりました.ちなみに標準とフィジカルはCPUを使うレンダラーですので,CPU性能の方が重要になります.
サードパーティ製レンダラーもCinema 4Dに対応しているものは非常に多いですが,この記事では標準レンダラーとフィジカルレンダラーについてのみ紹介しておきます.標準レンダラーというのはCinema 4Dの古いタイプのレンダラーで,フィジカルレンダラーが新しいタイプです.性能的にはどちらも一長一短ありますが,初心者にはフィジカルの方が設定等扱いやすい点が多いと思います.
レンダリング方法
Cinema 4Dでレンダリングする方法はいくつかありますが,よく使う方法を紹介します.大きく分けてエディタ上で行うプレビューレンダリングと,レンダリング結果を画像ビューアーに表示する2つがあります.
エディタ上でレンダリングする方法
ビューをレンダリング(Cntl + R)
アクティブなビューをレンダリング設定に従いレンダリングします.レンダリング中に他の操作をするとレンダリングを終了するため,あくまで確認のための機能です.
部分レンダリング
部分レンダリングを選択した後,エディタのレンダリングしたい領域をドラッグして指定すると,レンダリングが開始されます.部分的に確認したい場合に便利です.
インタラクティブレンダリング (Alt + R)
レンダリングしたいビューをアクティブにしてインタラクティブレンダリングを実行するとエディタ上に白い枠が表示され,その内部をレンダリングします.何かパラメータを変更するたびにレンダリングが実行されるので,作業しながらある程度の品質で結果を確認できるのがメリットです.インタラクティブレンダリングは枠の右側にある三角マークを上下に動かすことで品質をコントロールできます.上に移動させると高品質で速度が遅くなり,下に移動させると低品質で高速になります.枠の境界にあるドットでレンダリング領域を調整できます.
画像ビューアーにレンダリング結果を出力する
エディタレンダリングはあくまでプレビュー用です.パラメータ変更前後の違いをよく確認したい時や,最終レンダリングの時には画像ビューアーにレンダリングするのが通例です.そうしないモードもありますが,ここでは省きます.
レンダリングして画像ビューアーに(Shift + R)
レンダリング結果を画像表示ウィンドウに出力することでCinema 4Dはメモリ上に履歴を保存します.また,レンダリング設定で保存の設定がされている場合はレンダリングが完了した時点でファイルを保存するため,最初の内は最終レンダリングは画像ビューアーでおこなうと覚えておいて差し支えないでしょう.また,画像ビューアーにレンダリングされた結果はメモリに一時的に保存されます.ただし,Cinema 4Dを終了するとメモリ内のデータはすべて削除されます.レンダリング中にEscキーを押すか,ウィンドウを閉じるとレンダリングを中止することができます.
レンダリング結果はヒストリとして記録されるため,質感の違いやライティングの比較にも利用できます.レンダリング設定を調整してレンダリング時間を見たり,カラー補正をしたり,AB比較などの様々な機能を利用できます.
サードパーティレンダラには画像ビューアに代わる専用設計のビューアーが備わっているものもあり,そちらを使ってレンダリングを行うこともできます.
レンダリング設定について
レンダリングに関する設定は「レンダリング設定」(Ctrl + B)ウィンドウで行います.レンダリング設定は項目が豊富なので初学者にとっては何のパラメータが何をしているのかよく分からないと思いますので,ここでは最低限必要となる出力,保存,アンチエイリアスに関する設定を紹介しておきます.
レンダラー選択
その前に,まずは使用するレンダラを選択します.デフォルトでは標準レンダラになっていますが,初心者にオススメなのは設定が簡単なフィジカルレンダラーだと思っています.特に品質設定の面で標準に比べてかなり楽です.
標準
Cinema 4Dの最も基本的なレンダラーで古くから搭載されています.その影響か,品質に関する設定部分が少し面倒です.
フィジカル
標準より新しいタイプのレンダラーで,品質設定に関しては標準レンダラーよりも簡単になっています.また,フィジカルカメラに対応しており,リアルな被写界深度やモーションブラーの計算ができるのが特徴です.
ビューポートレンダラー
エディタで表示されている状態をレンダリングする機能です.高速にレンダリングできるため,レイアウトやアニメーションの確認などに使ったりします.
Redsfhit
Cinema 4D S26からRedshiftのCPU版が最初から使えるようになっています.GPUを使用しないためレンダリング速度は現在のところ遅めです.GPUでレンダリングするためにはResdhiftのライセンスが別途必要です.
出力設定
出力セクションではレンダリングする解像度に関する設定や,アニメーションレンダリング時のレンダリングフレームレンジ,フレームレートなどを設定します.解像度はプリセットの左側にある小さい三角マークボタンからプリセットを選択することもできます.
印刷関係の場合は幅の単位を「cm」などの単位に変更したい方も多いと思います.その場合は「解像度」のDPI設定を併用してレンダリングサイズを調整できます.ピクセルの場合はDPIは無効となります.解像度が高くなるとレンダリング時間は長くなるので,テスト用の時は小さめで確認するようにしてもよいでしょう.
アニメーションをレンダリングする場合は「フレームレンジ」でレンダリングする開始フレームと終了フレームを指定できます.
保存設定
レンダリング設定の保存にチェックを入れておきます.保存セクションではレンダリング時に画像を保存するディレクトリやファイル名,ファイルフォーマットを指定します.ディレクトリはプロジェクトファイルからの相対パスで指定もできるほか,トークン(またの別の機会に紹介します)という便利な機能も利用できます.
保存にチェックが入っていない場合は画像ビューアーでレンダリングしても保存されないので注意しましょう.
アンチエリアスに関する設定
アンチエイリアスというのはレンダリングした時の隣接するピクセルの色を滑らかにしてジャギーを軽減するための機能です.アンチエイリアスが無い場合は次のようなレンダリング結果となり,ピクセルのギザギザが目立ちあまり綺麗とは言えません.
アンチエイリアスを適用するとギザギザが軽減されて綺麗な画像になります.このアンチエイリアスの設定は標準レンダラーとフィジカルレンダラーとで設定箇所とパラメータが異なります.
標準レンダラーのアンチエイリアス
標準レンダラーの場合は,「アンチエイリアス」セクションでアンチエイリアスモードを指定します.「なし」,「ジオメトリ」,「ベスト」の3つから選択できます.
なし | アンチエイリアスを適用しません.ギザギザになりますが,その分レンダリング時間は短縮できます.レンダリング結果を早く確認したい時に使用します. |
ジオメトリ | アンチエイリアスを少し適用します.ギザギザはある程度軽減されますが,主に確認用で使用するモードです. |
ベスト | 最終レンダリングの際はベストを使用した方が良いでしょう.ベストにするとアンチエイリアスの「最小レベル」,「最大レベル」,「AAのしきい値」などのより詳細なパラメータを使用できます.一般的にはベストのデフォルト設定で十分といえますが,より綺麗な画像にしたい場合はこれらを上げる必要があります.しかしアンチエイリアスの精度をあげるとレンダリング時間は大幅に伸びるため,上げすぎには注意が必要です. |
フィジカルレンダラーのアンチエイリアス
フィジカルレンダラーを選択している場合,アンチエイリアスセクションは選択不可となります.代わりに「フィジカル」セクションが表示されるので,こちらの「サンプリング品質」で行います.
サンプリング品質はデフォルトで「低」設定になっていますが,この状態で標準の「ベスト」とほぼ同等の結果を得ることができるので,「低」でも十分綺麗なアンチエイリアスです.ただし,被写界深度やモーションブラーを使用している場合は「低」では足りないケースが多くなります.その時は「中」を試してみると良いでしょう.「高」はレンダリング時間が大幅に伸びるためほとんど使用するケースはありません.「中」でも少し長いので,筆者の場合は「サンプリング分割数」と「シェーディング分割数」の最低と最高を「低」と「中」の中間の設定値にして使用する事が多いです.
ボケた効果の品質設定は標準とフィジカルで大きく異なる
最後に品質に関する点として「ボケた」効果に関する設定があります.例えばエリアシャドウのボケた影や,鏡面反射の粗い反射,粗い屈折などです.これらはアンチエイリアスではなく,別の個所で品質をコントロールしますが,これについても標準とフィジカルで設定箇所が異なります.
標準レンダラーはエリアシャドウの品質はライトオブジェクトの「影」タブにある「計算精度」や「最小サンプル数」,「最大サンプル数」で調整することになります.粗い反射についてはマテリアルの反射チャンネルの反射レイヤ内にある「サンプル分割数」で行います.つまりライトオブジェクトごと,マテリアルごとに設定をする必要がある点で,メリットでありデメリットでもあります.メリットは目立つ部分だけ品質を上げることが出来ることですが,デメリットは設定箇所があちこちに散らばっているため,全体の品質を上げ下げするのがとても面倒である点です.
反面,フィジカルレンダラーを選択している場合,これらのパラメータはグレー表示され使用できなくなります.フィジカルレンダラーの場合は,シーン全体のサンプル数をレンダリング設定のフィジカルセクションで一括設定することができるため,個別に設定する必要がなくとても楽です.フィジカルレンダラーは品質に関して煩わしい操作が少ないため,標準レンダラーよりもおすすめする利用です.いずれのレンダラーを使用するにしても,まずはこれらの品質設定に関しては覚えておく必要があります.もちろん異なる点はこれだけではありませんが...