前回の続きです.今回はシーンの賑やかし要素としてごく簡単なヤシの木のモデリングを行います.
第1回目の記事はこちらを参照ください.
ヤシの木の幹を作る
ヤシの木用にいろいろなオブジェクトを追加するので,まずはシーンを整理します.ヌルを作成して,前回までに作成したオブジェクトをまとめて子オブジェクトにしておきます.ヌルの名前をつけておきます.作例では「Part1オブジェクト」としています.階層は閉じて,ヌルは非表示にしておきます.

これからヤシの木をモデリングしていきますが,何度も言うように作成方法は何通りもあり,人によってそれぞれ作り方は異なりますので,今回紹介しているのはあくまでパターンのひとつとして捉えておいてください.
幹の作成
幹はスイープで作成していきます.まず幹のパス用スプラインを作成しますので,スプラインペンツールを使ってみましょう.スプラインペンはポイントモードで利用できます.

透視ビューのまま作成すると思わぬ座標位置にポイントが作成されるのでエディタビューを切り替えて前面ビューにしておきます.原点付近でクリックして一番目のポイントを作成し,やや上に二番目のポイントを作成します.Escキーを押してスプラインを確定させます.

次にポイントの座標値を少し調整しておきます.ポイントモードのままライブ選択ツールでポイントを選択します.ポイントの座標位置は属性マネージャでは確認できないので「座標マネージャ」を開きます.ここで一番目のポイント座標位置XYZが原点の「0,0,0」付近にあること,また二番目のポイント座標XYZが「0,100,0」付近にあように調整します.移動ツールを使っても構いませんし,座標マネージャの欄に直接入力しても構いません.

つぎはスプラインの「補間法」を「Bスプライン」に変更しておきます.理由は色々ありますが,次におこなう細分化で均等に分割したいためです.

スプラインの始点と終点ができました.さらにスプラインを細分化してポイント数を増やしておきます.ビュー上で右クリックして「細分化」コマンドの歯車アイコンをクリックします.すると細分化のオプションが表示されるので,「分割数」を「4」としてOKを押します.

分割数を増やしたら,各ポイントを選択して少しだけ位置を調整して幹のうねりを表現していきます.

続いて円形スプラインを作成して,
「半径」…「5㎝」
「補間法」…「均等」
「分割数」…「2」
としておきます.
スイープを作成し,断面とパスのスプラインを子オブジェクトにします.幹の下から上までが同じ半径のままですので,上にいくにつれ少しずつ半径を小さくしていきます.スイープを選択して,
「終了端のスケール」…「30%」
にします.

ヤシの木の葉の作成
平面と膨張デフォーマで葉の輪郭を作成する
次は葉を作成します.ここではポリゴンモデリングとデフォーマを活用してみましょう.まずはプリミティブオブジェクトから「平面」を作成します.パラメータを
「幅」…「10㎝」
「高さ」…「100㎝」
「幅方向の分割数」…「2」
「高さ方向の分割数」…「10」
とします.

この平面をデフォーマで葉っぽい形状にします.デフォーマのサブパレットより「膨張」デフォーマを作成します.

膨張デフォーマを選択し,
「R.P」…「-90°」
「サイズ」…「10cm,100㎝,1㎝」
として,膨張デフォーマのケージが丁度平面を囲うようにしておきます.「R.P」を-90°にすることで膨張する向きを調整しています.

膨張デフォーマを平面オブジェクトの子オブジェクトにして,
「強度」…「200%」
に設定します.膨張デフォーマによって平面が膨らみました.

この平面の状態をポリゴンオブジェクトに変換します.平面を選択して,オブジェクトマネージャのメニューから「オブジェクト」→「オブジェクトを一体化+消去」を実行します.するとプリミティブオブジェクトだった平面がポリゴンオブジェクトになり,膨張デフォーマもポリゴン化したことにより削除されます.

「現在の状態をオブジェクト化」と「オブジェクトを一体化」も似たような機能ですがそれぞれ少し特長が異なります.
「オブジェクトを一体化」は複数選択したオブジェクト(親階層の場合は子を含む)を一つのオブジェクトに一体化してポリゴン化します.こちらは元々選択していたオブジェクトが残り,コピーとして作成されます.
これらはコピーを作成するという特徴があるので,もし一体化したことで何か不都合が出た場合のバックアップとして取っておいたり,他に利用したい場合に有効なコマンドです.
ポリゴンオブジェクトになるとポイント,エッジ,ポリゴンの各モードを使ってエレメントを直接編集できるようになります.「ポイント」モードにして,「ライブ選択」ツールをオンにしたら,葉の先端部部(マイナスZ方向側とする)の3つのポイントを選択します.ライブ選択ツールはマウスでドラッグしてなぞるようにしてエレメントを選択できるツールです.サークル内のエレメントが選択されます.またサークルサイズは属性マネージャで「半径」を調整するか,エディタ上でShiftキーを押しながら中ボタンドラッグで調整できます.サークルサイズは適宜調整してください.


3つのポイントを選択したら,エディタ上で右クリックしてコンテキストメニューを表示させ,「結合」コマンドを選択します.結合コマンドは選択したポイントを一つに結合するコマンドです.どの位置で結合するかはマウスカーソルの位置に応じて,選択したいずれかのポイントの位置または選択した中央の位置が白いポイントでハイライトされます.ここでは中心のポイントで結合させます.

次は葉の切れ込み入れてみます.「上面」ビューにして,葉のアウトライン上にある切れ込みを入れたいポイントをいくつか選択しておきます.選択出来たら,右クリックメニューから「ベベル」を選択します.

ベベルツールを選択したら,エディタ上を左ドラッグするか,属性マネージャでパラメータを設定して「適用」をクリックするとベベルが適用されます.今回は
「オフセット」…「5㎝」
を適用しました.

ポリゴンモードにしてベベルで生成された部分を選択して「Delete」または「Backspace」キーを押して削除します.

デフォーマ重ね掛けで葉を曲げる
続いて葉全体をデフォーマで曲げていきます.屈曲デフォーマを作成し,パラメータを
「P.X」…「15㎝」
「R.B」…「90°」
「サイズ」…「1㎝,30㎝,100㎝」
とします.すると次のような位置関係になります.

この状態で「強度」を上げても半分しか変形しないのですが,
「モード」…「無制限」
にすることで,ケージの外側にまでデフォーマの効果を及ぶようになります.つまり反対側も屈曲の影響を受けるようになります.中心から反対側も同じように曲げたい時は活用できる使い方です.

そしてもう一つ,新しく屈曲デフォーマを作成し,
「R.H」…「-90°」
「R.B」…「90°」
「サイズ」…「10cm,100㎝,30㎝」
としておきます.ちょうど先ほどの屈曲で曲げた形状を覆うように配置します.追加したデフォーマを平面の2番目の子オブジェクトにして,「強度」をあげると1番目の屈曲の結果から曲げることができます.


これで葉が一枚できました.いくつかのバリエーションを作成してもよいですが,今回はこの一枚を使いまわしていくことにあします.平面の名前を「葉」として分かりやすくしておきます.
葉のオブジェクトを配置しやすいように軸の位置をかえる
今の葉は軸位置が自身の中央にあるので複製して配置するにしても少し扱いにくいですので,軸の位置を葉の根本あたりに移動していきましょう.軸とはオブジェクトが持っている中心(原点)でローカル軸とも言います.ローカル軸の位置や角度を編集したい時は「軸を有効」モードをオンにします.


軸を有効モードをオンにして,モデルモードもオンにします.葉(ローカル軸位置を編集したいオブジェクト)を選択して,移動ツールでZ方向(葉の根本あたり)にギズモを移動させていきます.これで軸位置が変わったことになります.軸位置を移動させたら,必ず軸を有効モードをオフにしておきましょう.これで葉のオブジェクトは軸位置が根元にあるので,移動や回転,スケールさせる時にもこの軸位置が基準となります.


エディタ上にデフォーマが表示されていると邪魔なので,非表示にしておきましょう.
葉のクローナーとエフェクタで調整する
葉の配置はインスタンス化して複製して配置させたり,色々な方法がありますが,今回はクローナーとエフェクタで調整してきます.クローナーを作成して,葉を子オブジェクトにします.クローナーのパラメータを
「モード」…「放射」
「複製数」…「16」
「半径」…「0㎝」
としておきます.

クローナーを選択して,「トランスフォーム」タブを開き,位置,スケールを少し調整しておきます.(少し大きすぎました…)これで幹の上あたりに来るかともいます.
「P.Y」…「100㎝」
「S.X,S.Y,S.Z」…「0.8」
位置に関して言うとクローナー自体の位置を変更しても構いません.作り方は千差万別です.

葉の並びが均一なので,ランダムエフェクタでばらつきを出しておきます.クローナーを選択した状態で,「ランダム」エフェクタを作成します.この時点で葉の位置がバラバラになりますので,パラメータを調整します.
「位置」…「オン」
「P.X」…「0㎝」
「P.Y」…「5㎝」
「P.Z」…「0㎝」
「角度」…「オン」
「R.H」…「-150°」
「R.P」…「-30°」
「R.B」…「0°」
「スケール」…「オン」
「均等スケール」…「オン」
「スケール」…「-0.15」
これである程度葉の高さ,角度,スケールがランダムになりました.ただ,もう少しクオリティを追求するとなると葉が重なっているところがあったりするので,さらに調整が必要になりますが,これは初めての方向けのチュートリアルなのでここまででも十分でしょう.

もう少しクオリティを上げるための工夫
葉の厚みを付けるのも良いでしょう.ポリゴンモデリングでは押し出しというコマンドを使うこともできますし,クロスサーフェイスジェネレータで厚みを付ける方法,またはノードオペレータを使ったりと方法は様々ですが,軸の位置をあまり気にしなくてよいノードオペレータを使ってみることにします.アセットブラウザを開き,「ジオメトリモディファイア」を開きます.その中から「厚み付け」,「細分化」を屈曲2の下側にドラッグ&ドロップで配置していきます.オペレータもデフォーマと同様に上から順に処理されていきますので,順番に注意しましょう.順番やパラメータを変えたらいつでも結果を変えれるのもこの機能の強みです.

「厚み付け」は文字通りオブジェクトに厚みを付ける機能です.属性マネージャで
「厚み」…「2.5㎝」
とします.
「細分化」はSDSジェネレータを似た機能です.
「スムーズ」…「オン」
「くり返し数」…「2」
にします.

他の作成方法としては
・基本的なポリゴンモデリングで押し出ししてSDSで細分化する方法
・クロスサーフェイスで厚み付けしてSDSで細分化する方法
といった方法も取れます.今回はジオメトリモディファイアという機能を使いましたが,色々な作り方を知っていると様々な要件,シチュエーションに対応できるようになりますので,少しずつ色々試してみると良いでしょう.
グループ化する
パーツが出来上がたらヌルオブジェクトを作成してグループ化しておきます.名前を「木」などとして分かりやすくしておきましょう.

作って覚える第2回はヤシの木のモデリングで,以上となります.第3回は地面と木にマテリアルを設定していく作業となります.
ここまでのデータはこちらからダウンロードできます.