第3回目はこれまで作成したモデルに質感(マテリアル)を設定していきます.カラー,反射,透過,発光など実に様々なパラメータを駆使しながらマテリアルを作っていくわけですが,結構覚えることが多い上に3DCGならでは専門用語だらけですので,最初の内は簡単なマテリアルを作成して少しずつ慣れていくと良いでしょう.
マテリアルはレンダラーごとに専用のマテリアルが用意されています.Cinema 4Dの標準レンダラー用のマテリアル,Redshiftレンダラー用,サードパーティレンダラー(V-RayやOctaneなど)も専用マテリアルが用意されており,レンダラーが異なるとマテリアルの互換性は担保されないので正しくレンダリングができなくなります.今回はCinema 4D標準レンダラーを使うので,最初から組み込まれている標準マテリアルを使用しますが,標準マテリアルでもいくつか種類があり初心者を混乱させることでしょう.(Cinema 4D for Beginners Part 3 マテリアル基礎 マテリアルの作成と種類についてを参照)
レンダラーごとにマテリアルが異なるといっても,マテリアルという枠組みの中では共通する項目が多々あり,基本さえしっかりおさえていけば各レンダラ用のマテリアルの扱いもそれほど難しいことではありません.構造が似ている部分もありますから,レンダラーを変えたからと言ってゼロから学びなおしということもないです.今回は初めてCinema 4Dを触る方を対象としたチュートリアルなので標準マテリアルを使用しまが,他のレンダラーを扱う場合において役に立つことあるでしょう.
マテリアルを作成する
まずはマテリアルマネージャを開きます.アイコンをクリックするかShift + F2で開きます.マテリアルマネージャの+アイコンをクリックするか,何もない所でダブルクリックするとデフォルトマテリアルを作成します.

さらにマテリアルのサムネイルをダブルクリックするとマテリアルエディタが開きます.マテリアルのパラメータ編集はこのウィンドウを使うとやりやすいでしょう.これが標準マテリアルで,左の列に「カラー」,「拡散」,「発光」…と並んだ項目をチャンネルと呼びます.これらのチャンネルを必要に応じてチェックをオンにして組み合わせてマテリアルを構築していきます.デフォルトではカラーチャンネルと反射チャンネルにのみチェックが入っています.

それではカラーチャンネルを選択して,カラーを設定します.カラーチャンネルはオブジェクトの基本となる色を定義します.まずは地面用に芝生を見立てた黄緑色にしてみましょう(好みの色でかまいません).今回のチュートリアルの表現は単にカラーだけのものがほとんどですが,仕上がりとして少しふわっとした柔らかい仕上がりを目標としています.そこで,「照明モデル」を「オレン・ネイアー」というものに変更します.「ランバート」は表面が滑らかな質感に向いていおり,「オレン・ネイアー」は表面がざらざらした質感(例えば布)に向いているモデルだと言えます.ここは求める質感に応じて調整してください.また,マテリアルの名前も分かりやすくしておきましょう.ここでは「地面グリーン」と付けています.

反射チャンネルも見てみましょう.非常に重要なチャンネルですが,設定が複雑で初心者には理解が難しい箇所です.反射の設定をすることでより説得力のあるマテリアルになります.例えば磨きあげられたプラスチック,ざらざらしたプラスチック,金属,カーペイントのような複雑な塗装なども個々の設定で行うことができます.デフォルトでは「デフォルトスペキュラ」というものが設定してあるだけなので,反射という扱いとはかなり異なりますが...少し細かい設定は後の工程で紹介しますので,まずはデフォルトスペキュラの設定を
「幅」…「80%」
にしておきます.スペキュラというのはライトがある方向に疑似的な反射(のようなもの)を描画する機能であると基礎知識編で述べました.なのでこのスペキュラと言うパラメータをいくら変更してもリアルな反射になることはありません.スペキュラの幅を大きくしたことで,ライトがある方向にぼんやりとした明るい領域を描画するようになります.逆に小さくすると鋭いスペキュラを描画します.「スペキュラ強度」も併せて上げ下げしてどんな状態になるかプレビューで確認してみてください.

上の画像は幅が左から
「幅」…「25%,50%,80%」
「スペキュラ強度」…「300%,100%,50%」
となっています.
ただし,何度も言いますがスペキュラは周囲の環境や隣にあるオブジェクトの映り込みの反射はしません.あくまでライトの方向に反射のようなものを描画する機能です.昨今ではあまり使われない機能になりますが,それでもスペキュラと反射の違いは覚えてくようにしましょう.りあるは反射は後半で紹介します.
マテリアルをオブジェクトに割り当てる
地面用のマテリアルを作成したので,次はオブジェクトに割り当てる方法についてです.最も基本的な方法はマテリアルマネージャからオブジェクトマネージャ上のオブジェクトにドラッグ&ドロップすることです.またはエディタ上のオブジェクトにドラッグ&ドロップしてもよいです.ただし,正確性は前者の方が上でしょう.理由としてはオブジェクトが階層になっているときにエディタ上にドラッグ&ドロップした場合,必ずしも意図したオブジェクトに適用されるわけではないという点があるためです.シンプルな場合なら良いでしょうが,階層が複雑になったときはオブジェクトマネージャ上にドラッグ&ドロップした方が確実です.

それでは続けて道路,柵,木のマテリアルを作成してそれぞれのオブジェクトに割り当てていきましょう.いずれもシンプルにカラーとスペキュラの幅を変更するだけです.
新規で標準マテリアルを作成しても良いですが,すでにスペキュラ設定された地面用マテリアルを複製してカラーと名前だけ変更していきます.マテリアルの複製は複製したいマテリアルを選択してCtrl + C,Ctrl + V(コピーペースト)でもできますし,複製したいマテリアルを選択してCtrl + ドラッグでも複製できます.Ctrl + ドラッグによる複製のメリットはマテリアルを複製して,挿入位置も指定できる点があります.複数選択した状態でコピーペーストやCtrl + ドラッグすると複数マテリアルを複製できます.
複製したら名前を「道路」として,カラーチャンネルのカラーをグレーに変更し道路オブジェクトに割り当てます.

柵用のマテリアルも複製して作成します.名前,カラーを変更して割り当てます.

道路の左右に白線を引いてみみる
少し情報量を増やすために道路の脇に白線を引いてみましょう.作り方は様々な方法がありますが,今回はグラデーションシェーダを使って作成しみることにします.道路用マテリアルを開き,カラーチャンネルの「テクスチャ」という項目の右側に小さな三角アイコンがあるのでそれをクリックし,「グラデーション」をクリックします.これでテクスチャにグラデーションシェーダが読み込まれます.すると設定したカラーがグラデーションに置き換わります.

テクスチャはCinema 4Dで内部で生成するシェーダを読み込んだり,画像ファイルを読み込んだりするときに利用します.シェーダの種類もたくさんあります.また,シェーダはレンダラー専用に作られている機能もあり,中には標準レンダラーでしか使えないものもあります.逆にサードパーティレンダラー専用のシェーダもあります.
グラデーションシェーダのサムネイル画像またはボタンをクリックするとシェーダ設定画面に移動します.

グラデーションの設定を変更します.グラデーションの文字右側にある小さな矢印アイコンをクリックして詳細パラメータを開きます.左側の黒いノットを選択し,「補間」を「ステップ」に変更します.これで黒から白のグラデーションがなくなり,右側にあるノットの位置で色が変わるようになります.

グラデーションバーをクリックするとノットを追加できます.ノットを追加して,次の画像のようにします.ノットの補間はすべてステップに変更します.これで道路の横に白線を作ることができました.なぜこのような結果になるかというと,スイープで作成した時にUV座標というものが自動的に作成されていて,そのUV座標に対してこのノット位置でグラデーション設定をすると道路の横にマッチするようになるためです.UV座標は画像やシェーダを設定した時のサイズ等に影響する重要な仕組みですが,まだ十分に理解していなくても大丈夫です.

もう一度カラーチャンネルをクリックして元の状態に戻ります.そして,テクスチャの「混合モード」を「加算」に変更します.混合モードは設定したカラーに対してテクスチャまたはシェーダをどのように合成するかを調整するものです.「強度」を変更することで合成する割合を調整できます.

木のマテリアルも設定しましょう
木の幹と葉のマテリアルも作成して割り当てておきます.

木を地面に配置していく
マテリアル作業が終わったら,木を地面に配置していく作業を行いましょう.特に順序は関係ないので,慣れたら好きな順序で作業しても問題ありません.
木の配置もクローナーを利用しますので,まずはクローナーを新たに一つ作成し,木のグループを丸ごと子オブジェクトにします.クローナーのモードを「オブジェクト」にし,地面をオブジェクト欄にドラッグ&ドロップします.これでまずは地面に対してクローンを配置することができます.

また,
「インスタンスモード」…「レンダーインスタンス」
「複製数」…「60」(好みで,しかし多すぎると重くなります)
レンダーインスタンスモードは詳細は省きますが,基本的にインスタンスよりも省メモリで軽いデータとなりますのでより多くの複製数にも対処可能です.ただ,インスタンスに比べていくつかの機能面で制約もでてきます.

木を地面に対して90°回転させます.これはトランスフォームの
「R.P」…「-90°」
としてクローン全体を地面に垂直になるようにします.

しかしこの状態は見て分かる通り,道路の中にも木が生えてしまっています.そこで,道路のライン上はクローンを消してしまいましょう.こういったこともエフェクタで行うことができます.まずクローナーを選択した状態で,「簡易」エフェクタを作成します.「簡易」エフェクタはクローンの位置,角度,スケールをコントロールするシンプルなエフェクタです.シンプルですが出番は一番多いかもしれません.簡易エフェクタの効果を調整していきます.

「簡易」エフェクタのパラメータを
「位置」…「オフ」
「スケール」…「オン」
「均等スケール」…「オン」
「スケール」…「-1」
とすると,クローンが一旦すべて非表示になります.スケールを-1にするとクローンのスケールが0になり非表示になっているかのような状態になります.しかしすべて消えてもらっては困るので,道路の幅のところだけ非表示になるようにしていきます.そのように部分的にエフェクタの効果をかけるときに併用するのが「フィールド」です.フィールドは領域といった意味合いのある言葉ですが,まさにフィールドの領域を使って部分的に効果をつけたり,消したりできる,言い換えればマスクのような機能ともいえるでしょう.フィールドはエフェクタ側で設定をします.
まず,簡易エフェクタを選択し,「フィールド」タブを開きます.フィールドリストがありますがまだ空の状態ですので,ここで「線形フィールド」ボタンを長押しして,サブパレットより「円柱フィールド」を作成します.

簡易エフェクタの子オブジェクトに「円柱フィールド」が作成されます.そして再び木のクローンが表示されます.機能的には円柱フィールドの領域内にあるクローンに簡易エフェクタの効果が適用される状態ですが,肝心の円柱が小さすぎる状態です.そこで,円柱フィールドを選択して,
「高さ」…「80㎝」
「半径」…「600㎝」
「方向」…「Z+」
として丁度道路を囲う程度の大きさにします.すると,円形の領域内にある木のクローンのサイズが少し小さくなります.一応効果はかかっているようですが,完全に効果がかかっていないようです.その理由は,円柱フィールドの中心に近くになるにつれて強度が強くなっているためです.つまりこの状態は円柱フィールドに少し入っている木は,少しだけスケールが小さくなっていることになります.それでは円柱フィールドの領域に入るとすぐに最大の効果がかかるようにしましょう.円柱フィールドの「リマップ」タブを選択し,
「内部オフセット」…「100%」
にします.これで円柱フィールドの内部領域に入ったクローンは即座に簡易エフェクタの効果が最大でかかるようになります.つまり領域内の木は完全にスケールが0になります.

逆に内部領域に向けてゆるやかにエフェクタの効果をかけたい場合は「内部オフセット」を小さな値にします.
木の位置が重なってしまう点については今回はそこまで細かく調整はしません.クローナーの「シード」をコントロールして良い感じの配置になるところ程度にとどめておきます.

もうひとつ,クローンにランダムエフェクタを適用して角度,スケールをややランダムにしてみましょう.クローンを選択して「ランダム」エフェクタを作成します.パラメータの「位置」を「オフ」にして,「角度」と「スケール」をオンにしてパレメータを調整してみましょう.

最後は名前を整理して分かりやすくしておきます.もちろんエフェクタにもしっかり名前を付けておきましょう.また,ヌルオブジェクトで木のグループを作ってまとめておきます.また全体を一つのグループに入れてまとめておきます.

第3回は以上となります.次からはいよいよアニメーションの作成に入っていきます.
ここまでの完成データはこちらからダウンロードできます.